『現実の社会的構成:知識社会学論考』

学びながら読む、4週間の おそい 読書
ピーター・バーガーとトーマス・ルックマンの『現実の社会的構成:知識社会学論考』は、「ごく平凡な日常生活を営みつつある普通の人間がその社会についてもっている常識的な〈知識〉」(「新版訳者あとがき」)をとり上げた論考で、「社会構築主義」の古典として知られています。社会構築主義は、私たちが普段当たり前だと思っている現実は絶対的なものではなく、言葉や人間関係のなかで常に変化しうるものだと捉える議論です。大麻の使用やDVといった社会問題は「はじめから客観的に存在するのではなく、『社会問題がある』と定義し、クレイムを申し立てる社会成員の活動(クレイム申し立て活動)によって構築される」(赤川学『社会問題の社会学』)と考える「社会問題の社会学」などの領域で発展し、現代の社会学の一つの大きな潮流となっています。

では、本書は社会学という分野に閉じた意味しか持たないのでしょうか。私は全くそうではないと考えます。私たちは日々の生活の中で、様々な〈知識〉を動員して物事を理解しています。そしてそういった〈知識〉に基づいた物事の理解を、私たちは無批判に「客観的」なものだと思い込んではいないでしょうか。この無批判な状況を脱する手がかりを与えてくれるのが社会構築主義です。例えば「不登校」や「ひきこもり」、「喫煙」といった様々な現象が社会問題(逸脱)だとクレイム(主張)されることで、それが「問題」であるという社会的現実が構築されると考え、そのクレイムによって抜け落ちてしまっているものは何か、それは本当に「問題」として理解すべきなのか、他の捉え方はあり得るのかといった反省的な思考が促されます。こういった思考は私たちの常識を揺さぶり、新しい社会の見方を提示してくれます。社会構築主義は、社会に生きる全ての人々(私でありあなた)にとって、豊かな知的体験を提供してくれると確信しています。

参加者の皆さんは、職場や学校、家庭、サークル、習い事、ボランティアなど様々な社会に属し、その中で多様な〈知識〉を吸収しています。マス・メディアやインターネットも色々な情報を日々届けてくれます。それらを吸収し常識を作り出すことは、社会という荒波を生きていく上で非常に重要なことです。しかし、そんな荒波を少し離れて、思索に耽る時間があってもいいのではないでしょうか。本書はそういった知的な休息にはもってこいだと思います。

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読書会情報

地域
オンライン
開催場所
オンライン(7500円:毎週水曜20:00-21:30)
時間帯
毎週水曜日20時〜21時半
主催者
The Five Books
主催者の性別
男性
主催者の年代
30代